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福岡正信さん、永眠

自然農法の提唱者、福岡正信さんが16日、亡くなりました。

95歳でした。

人間の作為は必要がない。

自然はそのままで完全。

そう言い続けられ、実践された不耕起、無農薬、無肥料、無除草の自然農法は、その言葉の現れでした。

しかし、日本ではあまり評価されず、外国でその思想と実践が認められ、アジアのノーベル賞とも呼ばれるマグサイサイ賞を88年に受賞されています。

国内ではむしろその後に評価されましたが、その哲学に共鳴した世界各国の若者や思想家、農業関係者が愛媛県伊予市の自然農園を訪れていました。

その地の自然条件にあった植物が育つという考えの基、様々な種を粘土に練り込んだ「粘土団子」を考案され、各地の砂漠緑化に世界を駆けめぐってもおられました。

                                                                  

私が初めて福岡さんを知ったのは、もう20数年前のこと。

新聞記事だったと思うのですが、その世界観や人生観に共感し、追っかけを始めました。

東京にもよく講演に来られたので、その度に出かけ、13年前には愛媛のご自宅を訪問しました。

やはり福岡さんに心酔していた知人が、面会の約束を取り付けてくれ、他にも興味を持っている友人4家族での訪問でした。

その時は運悪く、直前に膝を痛められたとかで入院され、お会いすることは出来ませんでしたが、自然農園の見学をさせて頂きました。

農園には様々な果樹や野菜が混植されていて、4月だったので背丈ほどもある大根の花が咲き乱れていたのが特に印象に残っています。

                                                                  

しかし、なんと言っても忘れられないのは、その年の冬、四国に行ってもお会いできなかった福岡さんと、ばったり御茶ノ水の駅で遭遇したことです。

長女のピアノの発表会が御茶ノ水のホールであり、家族全員で出かけた帰りのことでした。

日曜日の駅の雑踏の中に、見紛う事なき、藍の作務衣に白く長い髭を蓄えた福岡さんの姿があったのです。

改札を出てこられた福岡さんに向かって、私は迷うことなく近づき、声をかけました。

春に伺ったけれどもお会いできなかったこと、何度もお話をお聞きしていることなど話すと、福岡さんは「よかったら、その辺でお茶でもどうですか」と誘ってくださったのです。

私はこれまでの人生であまり後悔していることはないのですが、この時の対応ばかりは今も後悔が残ります。

その時、家族で食事に行くことになっていて、迷ったあげく、そちらを優先してしまいました。

あの時、喫茶店にお供していたら何かが変わっていた、とまでは思わないのですが、福岡さん自身をもっと感じることが出来たのに…と、残念です。

                                                                  

福岡さんは種子の重要さを説き、特にアメリカの種子戦略に強い警戒心を抱かれ、注意を喚起されていました。

この警告を受け止め、自家採種を行っている人も少なくありません。

この点はまだあまり表立って話題にはなっていませんが、いずれ顕在化するのではないかと思います。

また、一家に300坪ということを言われていたのが印象に残っています。

300坪あれば一家族の生活が自然の力でまかなえる、ゴミも自然に帰すことが出来る、と。

そして、自宅に押しかける信奉者に対しては「あなたはどう行動するのか」と、理論だけではなく、実践の有無を厳しく問われました。

その言葉の裏には、後継者が育っていないことの寂しさもあったように思います。

単なる農業技術ではなく、そこに哲学があったので、おっしゃることは時に難解で、時代が追いつかないと表現した人もいましたが、そういう面があったかも知れません。

また、思想や哲学といったものと、その人の日常の生き方とは必ずしも一致しない、ということもあったかもしれない、往々にして現実と離れてしまうといったこともあったかもしれない、と勝手に想像しています。

しかし、文字通りの後継者はいなかったかもしれませんが、福岡さんの言葉は多くの農業者、思想家に革命的な示唆を与えたことも事実です。

独自の自然農を実践されている川口由一さんも、無農薬りんごで有名になった青森の木村秋則さんも、ギリギリのところで福岡さんの著書に出会い、道を開かれました。

日本だけでなく、インドの無農薬紅茶で有名なマカイバリ農園など、世界的にも様々な影響を与え続けてています。

福岡さんに影響を受けた人達が行動し、その影響がまた静かに広がっている…。

あなたの投げた石は確実に大きな波紋を広げていますよ、と、あの人なつこい笑顔を思い出しながら、福岡さんを偲んでいます。

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コメント

私の近所に94歳のご老人が農業をされています。
まるで出勤してくるように9:00に畑に着きます。
いつも見て通るだけでしたが、昨日思い切って声を掛けました。こんにゃくの取入れをしていたので分けていただこうと思ったのです。
この方は完全無農薬・除草剤も使わないとの事。
この地方はこんにゃく農家が多いのですが、その農薬の使い方といったらすごくって食べる気になりません。手づくりこんにゃくがしたいので思い切って声を掛けてよかったです。
分けていただけることになりました。
福岡さんのこと、以前から気になっていた方でしたので、コメントさせていただきました。

投稿: うらべに | 2008年10月20日 (月) 11時03分

うらべにさんへ
そうですか、普通のこんにゃくは農薬がたくさん使われているんですね。
こんにゃくに限らず、農薬を使う農家は多いように聞いています。
でも、94歳のご老人、すごいですね。
農薬が普及する以前の、昔からの農業をされているのかも?
だから元気で長生きされているのかもしれませんね。
年をとってもできる仕事がある、それは都会ではなかなか難しいことです。
いいところにお住まいですね、うらやましいです~

投稿: chiki | 2008年10月20日 (月) 21時02分

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